第37章 忍び寄る影
女「まあ、いいわ。アイツが覚醒するまでの時間、コッチの準備にたっぷり使わせて貰うよ」
茨木「…魔界から彼を召喚致しますか」
女「ええ。準備、お願いね」
茨木「御意」
茨木童子は女に深く頭を下げると、スッと姿を消した。
女は一息つくと、近くにある椅子に静かに腰掛け、扉の向こうにある気配に話し掛ける。
女「いるんでしょ、戸愚呂兄弟」
戸愚呂兄弟と呼ばれた者達が、扉を開け姿を現す。
戸愚呂「アンタも人が悪いねぇ」
女「フフ、よく言われるわ」
女に話し掛けているのは戸愚呂弟。彼もまた、強い妖気を放っている。
戸弟「そんなに例の娘が嫌いかい?」
女「ええ、嫌いよ」
女の表情は殺意で満ち溢れている。
それにつれ、更に禍々しい妖気が部屋いっぱいに広がる。
戸弟「どうしてそんなにあの娘の覚醒を待つんだい?そんなに嫌いなら今殺せばいいだろうに」
女「玉藻として覚醒したアイツじゃなきゃ意味ないの」
戸弟「…どうやら単純に嫌いという訳じゃないようだねぇ」
女「そゆこと」
女は小太刀を取り出して刃を抜いた。
左手で小太刀を愛でる様に撫でながら、右腕軽く振り小太刀を壁に突き刺す。
女「時音はあたしが殺す。
酒呑童子の生まれ変わりであるこのあたし、凛姫が」