第37章 忍び寄る影
人間が簡単に踏み入ることが出来ない山奥の屋敷に、ある女が不気味な妖気を放っていた。
女「へえ、やっぱりソイツはココに来るんだぁ」
「…はい、おそらく」
女の使い魔である男が片膝をつき、入手した情報を報告していた。
男の名は茨木童子-イバラギドウジ-。かつて大江山を荒らした鬼、酒呑童子-シュテンドウシ-の元部下だ。
女「にしても、あの妖狐蔵馬を追いかける為に人間になるなんて、ホントに馬鹿な女よね。早く元の姿に戻って覚醒してくれないと困るんだけどなぁ」
面白そうに語る女を見つめながら、茨木童子は更に話を続ける。
茨木「新情報で、玉藻が造った二匹の式神のうちの一匹も目覚めたようです」
女「ああ、アイツか…。確か、澄とか言ったよね」
茨木「ええ。そろそろヤツの覚醒も近いでしょう」
女「ふぅん」
胸元に付けてある赤いペンダントを弄りながら相槌をうつ女の瞳は、冷ややかなものだった。
その瞳は、ペンダントの光によって赤く照らされている。
女「確かに覚醒は近いみたい。けど、あと何年するかわかんない。早く覚醒してくれないと殺せないよ…」
茨木「もう少しの辛抱で御座います」
はぁ…。と溜め息を付きながら、女はペンダントから窓の外へ視線を移す。