第36章 安息
気を失ったままの幽助を和真君の部屋に運び、彼のベッドに寝かせた。
霊力を使いきり死にかけだったらしいが、和真君が幽助に霊気を送ってくれた為、助かったのだと蔵馬が言っていた。
螢子ちゃんは眠っている幽助の隣へ駆けつけ、ぼたんは和真君の治療。灯夜は道導の能力で飛影に妖力を分けている。
私はというと、「二人は畳の部屋があるからそこで仲良く治療しな」という静流さんの気遣いで、畳の部屋に蔵馬と二人きり。
蔵馬「…………。」
「………。」
お互い無言状態。
居心地は悪くないけど、正直言うと気まづい。
蔵馬「時音」
「……はい」
先に声を発したのは蔵馬。
蔵馬「何故あんな無茶を?」
「無茶…とは?」
蔵馬「わざわざ説明しなきゃわからない?」
そう言われて腕を引かれる。蔵馬の胸に飛び込んだ状態になった。
蔵馬「妖力が不安定なのに、緋神子の術を使ったんだろ?」
「…………わかってたのね」
蔵馬「時音のその疲れた顔を見れば判るよ。周りは騙せても、オレは騙せないよ」
やっぱり蔵馬には敵わない…か。
まぁあれだけ一緒にいれば、当然といっとら当然かな。
蔵馬「時音」
「ん…!」
いきなり唇を重ねてくる蔵馬。今のはいつもより強引だった。
けど、それと共に体の疲れがとれていく。
蔵馬が私に妖気を分けている証拠だ。
「ハァ……蔵馬?」
解放された私は肩で呼吸をしながら蔵馬を見つめる。彼の顔は真剣そのものだ。
蔵馬「無理をしないよう言ったはずだ」
「でもぼたんと螢子ちゃんにケガさせる訳にはいかないでしょ?」
蔵馬「そうだが、君の場合は無茶をしすぎだ」
「わかってる。でも今回はそうでもしないと逃げ切れなかったわ」
蔵馬に負けじと私も強気で言い返す。
数秒見つめ合った後、蔵馬が「はぁ…」と溜め息をついた。