第35章 予感的中
コンパクトを直し、路地裏を出た。
けれど、何か違和感を感じた。
ぼたんと話す前より、明らかに街の雰囲気が不気味だった。
「…………っ!?」
向こうの方で、騒ぎがあったようだ。人混みを掻き分けて見れば、青白い顔色をした人が暴れまわっている。
人目見てわかった。
「間違いない、魔回虫に取り付かれた人間だわ」
ここで攻撃すれば、私が捕まる。かと言って見逃すわけにはいかない…。
アイツを誘き寄せるしかないわね。
私は近くの路地裏に移動し、笛を出した。
この笛は特殊なもので、我が一族の能力の一つでもある。この笛を吹くことによって、対象である妖怪の意識を操る事ができる。
人間に笛の音は聞こえないよう出来ているので、和真君程の霊力がない限り、聞こえる事はない。
魔回虫が虫笛で操られているとすれば、この笛にも反応してくれるはず。
私は吹き口に唇を当て、ゆっくりと二酸化炭素を吐く。
軽やかな音が風にのり、魔回虫に取り付かれた人間は、私の方へ歩いて来る。
そして子守唄を吹けば、その人は直ぐにその場に倒れ眠ってしまった。
私は直ぐに呪符を出して、その人の中から魔回虫を追い出し、殺虫剤で仕留めた。
「これは…そろそろ取り付かれた人間が増えてくる頃かもしれない」
それと同時に感じる胸騒ぎ。
「取り敢えず一匹でも多くの魔回虫を駆除しないと…」
?〈キューキュー〉
ふと肩に乗っていた日和がムクリと体を起こした。
「どうしたの?日和」
日和〈キュー〉
ピョンと、地面へ降りると、そのまま路地裏を出て行った。
私は急いで後を追っていると、着いた場所は保育園だった。
日和〈キューキュー、キュー〉
日和がいる場所に近寄って見ると、何匹もの魔回虫がいた。
直ぐに殺虫剤で虫を殺したが、また別の場所に魔回虫が…。
「こんな所に、こんなに魔回虫がいたら危険だわ…」
園内も心配だった。
でも入るわけにはいかないし…。
日和〈キュキュー!キュー〉
「え?日和が代わりに行ってくれるの?」
日和〈キュー!!〉
「わかったわ。園内の魔回虫はお願い。私は周辺を探し回ってみるわ」
日和〈キュキュー!!〉