第34章 不吉の予兆
「ねぇ、蔵馬」
蔵馬「ん?」
「私ね、最近よく考えることがあるの」
いつからか忘れたけれど、最近考える。
"愛"とは、何なのか。
覚醒が近づく度に、何故か考える様になった。自然と。
玉藻の転生として生まれた私だからこそ、考えてしまうものなのか。
覚醒へ近づいていることに恐れを感じているのに、何故かそんな事を考えてしまう自分にも、疑問を抱いていた。
でも…私は思った。
玉藻も本当は、愛に生きた一人の女だったのではないか…と。
人間でも妖怪でもない。
彼女がどれ程恐れられる妖怪でも、彼女も一人の女なのだから。
「どうしてか、何が切っ掛けなのか分からない。けど、気になって仕方がないの。蔵馬の考える"愛"って何なの?」
蔵馬「…………。さぁね、そんなこと考えた事もなかったな。
ただ一つ言えるのは、オレにとっての生きる全ては君と、そして今の日常。つまり、母さん達を守ることが、オレの存在する意味。
つまり、そこに愛があるからこその今だと思うけどね」
「……そっか」
蔵馬の言っていることも解る。
でも、何かが違う気がする。
すると、ポンッと頭に手を置かれた。
「蔵馬?」
蔵馬「今必死に答えを出す必要はないよ。まだ時間はある。ゆっくり答えを探せばいい」
「……うん」
ただ何となくだけど、それを考える切っ掛けとなったのは、あのお話なんだと思う。