第34章 不吉の予兆
「今日、大事な話があるから、学校終ったら秀一の家寄るわね」
蔵馬「大事な話?」
「ちょっと…今朝色々あって」
あの夢がまだ頭から離れない。正直、蔵馬から離れたくなかった。
でも、これから学校がある。ずっと一緒にいるわけにもいかない。
「…だから、予定開けておいてね」
蔵馬「元々大した予定なんてないから問題ないよ。母さんは夕方から畑中さんと出掛けるって言ってたから、家もあいてるしね」
「…そう」
未だに気分が優れない。
今日一日、大丈夫かな…。
蔵馬「何か悪い夢でも見た?」
「…え」
蔵馬「さっき会った時から、顔色悪かったから。何かあったのは解ったよ」
そう言いながら、ポンポンと私の頭を撫でる蔵馬。
そうされただけで、何だか凄く心が落ち着いた。
「…うん。悪い夢っていうのは正解」
蔵馬「そうか。じゃあ、詳しい話しはオレの家で聞くよ。取り敢えず今は、心を休ませて。ね?」
「…うん、ありがとう」
***
昼休み。
灯夜といつものラウンジで昼食をとっていた。
彼女にも、今朝の夢の内容を話した。
私の話しを聞いていると時の灯夜の顔はとても険しいもので…話しが終り、私達を取り巻く静かな空気を破った彼女の言葉を聞いて、私は驚きを隠せなかった。
灯夜「僕も…同じ夢を見たよ」
「…え?」
灯夜も…同じ夢を…?
だとしたら…
「まずい…わね」
"悪夢を見る"ということも緋神子の能力の一つ。
緋神子の見る悪夢とは即ち、未来予知だ。
複数の緋神子が同じタイミングで、同じ夢を見るということは、その悪夢は絶対起きる…ということだ。
灯夜「ただ、時音の言っていた"不気味なオーラを纏った人の夢"は見てないよ」
実は、私が見た夢は二つで、一番目に見たのは、町が凶悪な人間によって破壊されていくものだった。
妖怪ではなく、人間というところに違和感を感じる。
私だけでなく灯夜も見たという夢はその夢だった。
「だとするとその二つ目の夢は、澄の言っていた私の覚醒が近いってことよね」
灯夜「うん、そうなるね」
暗い面持ちな灯夜を尻目に、私の心は不安が募るばかりであった。