第32章 儀式
蔵馬にお説教された後、二人で家の中に入った。
それから夕食を皆で食べて、少しゆっくりしてるうちに、空には月が見えていた。
私は私服から巫女装束へ着替え、水色の玉を持った。
この玉の中に、澄が眠っている。
幻海「そろそろ時間だね。お前たち、行くよ。
時音、途中で無理だと思ったら、すぐにあたしらに言うんだよ?いいね」
「…………はい」
と返事はしたものの、正直途中で止めるなど、そんなつもりは無い。
だから、儀式は最後までやり遂げる。
***
皆で家を出て、森の中を真っ直ぐに歩いていく。
すると奥の方に、綺麗な湖があった。
この湖は、私がよく使っている湖。
儀式にはもってこいの場所だった。
幻海「時音水面に写っている月の真ん中に行きな」
「うん」
私は巫女装束を纏ったまま、湖の中へ入る。
ゆっくりと歩きながら、水面に写る月の真ん中まで行き立ち止まった。
幻海「意識を全てその玉に向け、全妖力を注ぎ込め」
「……はい」
私は目を閉じて感覚をシャットアウトさせる。
周りの音や気配は何も聞こえず、感じなくなった。
いつの間にか、自分の世界が"無"になった感覚を覚えた。
ゆっくりと目を開け、両手で握り締めている水色の玉を、腕を動かし前へ翳す。
そして私は、全ての妖力を…玉の中に注ぎ込んだ。
その刹那…
カッ!!
目映い光が私の目の前を支配する。
「……ぐっ…」
その光は、天へ登って行く。
まるで、竜のように…
その光は力なのか、周りの水が私の3mほど先に、水の球を作るかの様に集まっていく。
やがて光は収まり、何事もなかったような静寂に包まれる。
そんな中、水の球の周りが流れ落ち、球の中にいたのは…
晴れ空のような澄んだ色の瞳。透き通るような水色の髪。その長い髪は後ろで緩く一纏めにされている。
服は巫覡-フゲキ-(男性の巫女と思って頂ければ)が着る、神職装束を纏っている。
水面の上に立つ彼は正しく、水のクエスト。
澄、ご当人だった。