第32章 儀式
幻海「まったく。お前たち、バカやってる暇などないだろ!!
時音、また客が来たよ」
「え?…あ」
私の目に写ったのは、お母様と…そして、お父様の姿。
「お母様!!」
桜音「時音、久し振りですね。灯夜さんも、お久し振りです」
灯夜「こちらこそ、お久し振りです」
桜音「二人とも、元気そうでなによりです
……あなた」
お母様が移した目線の先は、私のお父様。
土御門珀時。
「……お父様!」
私はお父様に、ペコリとお辞儀した。
けれど…
珀時「………。」
お父様は私にチラリと目線を動かしただけで、何も言わず儀式の湖の方へ歩いて行く。
「………っ」
桜音「………」
幻海「そこまでしてこのコを無視する理由はなんだい」
「っ!!」
突然おばあちゃんが衝撃的な質問を、お父様に投げ出した。
桜音「……幻海さん」
幻海「お前、それでも父親か?それとも、そんなに玉藻の転生として生まれてきた時音が憎いのかい?」
珀時「………あぁ」
「っ!?」
桜音「あなた!!」
そんな…お父様が、私を…?
目元が熱くなる。涙が溢れそうで…
灯夜「……時音」
灯夜が私の背中をさすってくれる。
またおばあちゃんが声を発した。
幻海「そんなにこのコが憎いなら、儀式などに来なくていいだろ
それとも、儀式を止めに来たのかい?」
珀時「それ以外に何かあるか」
「………」
コエンマ「珀時。儀式を止めれば、時音の命に関わるかも知れんのだぞ?
それも解っているのか」
お父様…
珀時「………私には、どうでもいい事だ」
「っ!?」
そのまま私たちに背を向けて歩き出すお父様。
どうして?
私だって…私だって、望んで玉藻の生まれ変わりとして、生まれてきたわけじゃないのに…
コエンマ「自分の娘が死んでもいいというのか!?」
珀時「…えぇ」
「…………。」
悲しすぎて…辛くて…言葉が出なかった。
その時…私のよく知る声が聞こえてきた。
それは…
蔵馬「そうはさせませんよ」
私の…最愛の人の声だった…