第29章 互いの大切さ
オレの強引さを理解している時音は、オレのしぶとさに諦めたのか、渋々ソファーに座り直した。
「………時音、キミを置いて行くような事をして…本当にすまない…」
時音「………」
「だけど…もしあの時、捧げるモノが命だとキミに言えば…絶対に『自分がやる』と言い張るに決まってる。
だから言えなかった…母さんも助けて、キミも傷つけたくなくて…勝手だとわかっていた
けど…オレの勝手な考えでキミを巻き込みたくなかったんだ…」
時音「……ら…て」
「え?」
時音「………だからって、自分を犠牲にするやり方でないといけなかったの!?
それでホントに蔵馬が死んじゃったら…いなくなったら、私どうすればいいの!?」
「…時音」
オレに背を向けたまま、声を張り上げて怒鳴る時音。
その声は少し震えていて…きっと泣くのを我慢しているのだろう
時音「…私だけじゃない。おば様だってそうよ…
記憶を消せば終わらせれるような事じゃない、きっと秀一のこと思い出す…それ以前に母親が自分の息子忘れるハズないわ
麻弥のときみたいに、上手くいくと思わないでよ…
それに、今度こそ一緒にいてくれるんじゃなかったの?また約束破るの?もうたくさんだよ…蔵馬と、離れ離れなんて…」
涙がこぼれそうなのか、肩を震わせて話す時音の姿を…見ていることなど出来なくて…
オレは後ろから彼女をそっと、包み込むように抱きしめた。