第29章 互いの大切さ
あれから、オレは時音と二人で家へ帰った。
勿論オレたちの間に会話はなかった。
無理もないか…時音を怒らせてしまったことに変わりないのだから…
家に着いてから、飛影に刺された腹部の手当てを時音にしてもらった。
けれど時音は淡々と治療に手を動かすだけで、まだ怒っていることがわかる。
手当てが終わり、時音は救急箱に道具を片付けていく。
「……ありがとう。時音」
時音「………」
やっぱり返事がない…か
時音「……私、帰る」
ーーーガシッ
ソファーから立ち上がる時音。
オレはそんな時音の腕を掴み、引き止めた。
「…待ってくれ」
時音「………何」
オレの方を向かずに乱暴に返事をする時音。
顔は前髪で隠れてよく見えない。
けど、オレからは見えないその表情はどんなものか…読み取ることができた。
きっと…また強がっている…
いつもそうだ、オレとケンカすれば必ず強がる。よほどの事がない限り…
「時音、キミとちゃんと話しがしたい…」
時音「私は…話すことなんて…「オレはあるんだ」
断り続ける時音を強引に引き止める。
ここまでしなければ、彼女はオレを避けつづけるだけだ。