• テキストサイズ

時の贈り物*[幽遊白書]*

第26章 猶予


幽助のマンションを後にし、私は空に浮かぶ満月を見ながら、暗黒鏡のことを考えていた。

願いを叶えるために必要な"何か"
それは一体なんなのかしら…
蔵馬は、その"何か"を知っているのかな…

「………」

一人でトボトボ歩きながら、その"何か"について考えていると、前から聞きなれた声が私を呼んだ。

蔵馬「時音」

「!蔵馬!!」

前を向くと、木にもたれかかった蔵馬の姿があった。

蔵馬「…全く、こんなに暗いのにあまり歩き回らないでくれ」

「もぅ、過保護なんだから…」

蔵馬「時音は只でさえ鈍いのに…だから心配なんだよ」

「ちょっ!私鈍くなんかないもん!!」

蔵馬に心配されるほど鈍くないし!!
だいたいもう立派な高校生なんだから、そこまで心配されなくても大丈夫なのに!

蔵馬「ハァ…もぅいいよ」

「……蔵馬、さっきの私たちの会話…外から聞いてたでしょ?」

蔵馬「まぁね」

二人で歩きながら話をする。

蔵馬に…聞いてみよう
願いを叶えるための"何か"を…

「……暗黒鏡で願いを叶えるには、あるものを捧げなきゃならないんでしょ?
それって…何?」

蔵馬「………」

「……蔵、馬?」

顔をうつ向かせたまま、口を開こうとしない蔵馬。

どうして何も話してくれないの?
どうして黙ったままなの?

言い様のない不安が、私の心を支配していく。

蔵馬「……そうだな…」

「ん?」

蔵馬「じゃあ時音がオレのこと、昔みたいに"秀くん"って間違えずに呼べたら教えてあげるよ」

「………」

は?

「……何?それ」

蔵馬「何を捧げるのか気になるんだろ?だからそれを知りたければ、オレのこと"秀くん"って呼んでみてってこと」

「は、はぁ!?」

私は真剣な話をしているのにっ!!
またコイツはふざけて!

蔵馬「じゃ、そういう事だから」

「いやいや、待ちなさいよ!!
バカ秀一!!!!」



この時、私は知らなかった…
蔵馬がどうして条件をだしたのかを

気付かなかった…
蔵馬が悲しい顔をしていたことを
/ 282ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp