第21章 世間は狭い
チリンチリン~
店のドアを開け中に入ると、お店の中は可愛らしい手芸品が沢山あった。
色とりどりのフェルトや糸。
ビーズ、毛糸、手芸道具等々、品物が勢揃い。
「何のぬいぐるみにしようか…。雪村さんはどうするの?」
螢子「あたしは…くまにしよっかな…」
「くまか…私は…」
何がいいかな…
私もくまに?
でも………んー……
秀一…蔵馬といえば…
「……きつね」
螢子「え?」
「私、きつねする」
螢子「きつね…いいですね!」
「ありがとう」
***
買う物が決まり、他の材料も買いあわせて店を出た。
「なんだかあっさり決まっちゃったね」
螢子「そうですね。家に帰ったら早速作ろっと」
フフ…雪村さんは可愛いな…
「ねぇ、雪村さん」
螢子「はい?」
「ぬいぐるみの誕生日って知ってる?」
螢子「ぬいぐるみの…誕生日?作られた日ですか?」
「それでもいいんだけど、お店で買ったものや頂いたものは、作られた日なんてわからないでしょ?
だから、ぬいぐるみに名前を付けてリボンをまいた日が、ぬいぐるみの誕生日になるの」
螢子「へ~、そうなんですか」
「それから、外国では自分で作ったぬいぐるみに、自分の名前をつけて好きな人にあげると、両想いでいられる。との言い伝えもあるそうよ」
螢子「……両想いで…。土御門先輩って物知りですよね」
「そんな、私の彼氏なんか私より物知りだから」
事実。
蔵馬の頭脳は半端がないよ…
螢子「……先輩、彼氏できたんですか?」
「えぇ。この前話した幼馴染みのね」
螢子「そうなんですか……。いいなぁ~あたしも彼氏欲しい……」
「フフ、雪村さんみたいな可愛らしい女の子なら、直ぐに彼氏なんてできるよ」
螢子「だと、いいんですけど……。そういえば先輩、その制服って聖皇学院ですよね?」
「そうだけど」
螢子「………ってことは、先輩ってお嬢様!?」
「えぇ。家が稲荷大社なの」
螢子「すごーい…。じゃあ、先輩の彼氏さんは…」
「盟王学園」
螢子「盟王って……どっちも超がつく名門進学校じゃないですか!!恋人揃って頭いいんですね!」
まあ、そうなんだけど…
螢子「あたしも先輩みたいになろっと」
なんだか変な気合い、入れさせちゃったかな……?