第1章 1
「新しいリードってのがこれ。リコのレゼルヴ。リコの中でも最上級モデルなんだ。高いから入れるの渋ってたんだけど、林檎さんにも前から入れてほしいって言われてたし、学園の方からも指定で頼まれるようになったから、この機会に店に置くことにしたんだ」
カゴに突っ込んだリードの箱の中から白い上品な箱を掴んで神宮寺レンの前に置いた。
「君はいつもバンドレンのトラディショナルとかあと…ZZだっけ?だけど、たまにはリコのリードを使ってみたもいいんじゃないかな?私はリード楽器の人じゃないからよくわからないけど、あーでも、温かみのある音色が特徴らしいからそういうのを探してるのなら…
あぁ、もっと違うのを探してたなら押し付けかもしれないんだけど、どうせなら上手なサックス吹きの人に新しいモノは試して欲しいし…」
視線を感じて、神宮寺レンの方を見ると、彼はじっと私の顔を見つめていた。
「…なにか顔についてた?」
「いや。楽器のことになると本当に幸せそうによくしゃべるんだな、と思ってね」
彼はそう言って楽しそうに笑った。
「だけど、無理はいけないよ。普段から楽器の勉強とお店番で忙しいんだろうけど、夜更かしは肌に良くない」
神宮寺氏は私の目元のクマをサッと撫でた。
「な…ちょ…!」
そんなふうに見られていたのか、と思うとなんだか恥ずかしくなってしまった。