第1章 1
「さて、今日はどんな用事かな」
私は神宮寺レンに向き直った。
「そんな睨まなくてもいいじゃないか。ちゃんと用があってきてるんだから」
確かにそうかも知れないが、神宮寺レンに対する私の警戒心は根強い。
「今日はリードとリガチャーの選定に来たんだ」
「なんだ、そうだったの」
ほっとすると同時に、楽器の話ができると思うとワクワクしてきた。
「レディ、本当に楽器のことが好きなんだね。顔が輝いているよ」
「楽器が好きなんだから仕方ないです。そんなことより、リードならさっき新しいリードが入ったんだ…あ、リガチャーもだっけ。だったら管楽器コーナーのリペア台で楽器を出したほうがいいよね」
私はいそいそと管楽器コーナーのリペア台に向かった。