第5章 5
音が止まり、レンはゆっくりと構えを解いた。
「どう…だった?」
「最高だよ。文句のつけどころもない。こんなにいい状態で帰ってきたのは初めてだ」
「そ、そんなに言ってもらっても…」
嬉しすぎて、だらしないくしゃくしゃの笑顔をレンに向けてしまったように思う。
一瞬彼は困ったような顔を見せた。
すると、彼はちょっと迷った仕草を見せ、耳を貸すようにジェスチャーをした。
その通りに耳を貸す。
「そういう笑顔は俺以外に見せないように」
それだけ言うと、レンは楽器を片付け始めた。
顔が熱くなる。
「え、あ、が、楽器は私が磨くから!置いといて!レンはカウンターで待っててください!」