第4章 4
「ねぇ一ノ瀬くん」
「なんですか」
「好き。付き合おうよ」
「バカ言ってるんじゃありません。寝言は寝てから、私のいないところで言ってください」
「あは、初告白と初振られ同時に経験しちゃった」
「今のはノーカンです。私はなにも聞いてませんし、言ってません」
ハハハ、と乾いた笑いがとまらない。
「ヤケになってどうするんですか。今ならまだ間に合います。追いかけてください」
「追いかけてどうすればいいのさ」
「そんなもの知りませんよ。あなた自身でどうにかしてください」
「別に、神宮寺レンに話すことなんて」
「いいからいますぐ!」
騒ぎが聞こえたのか、店長がリペア室から顔を出した。
「お、トキヤくん。こんにちは。何かあったの?」
「ええ。ちょっと涼子さんにお客さんを追いかけさせようと」
一ノ瀬くんがグイグイと私の背中を押す。
「なるほど、そうだったの。ほら、涼子ちゃん。善は急げだよ。追いかけておいで」
「追いかけておいでって…!善なのか悪なのかわかってないくせにー!」
あらんかぎりの大声でわめく。
「そんなことないさ。わかるよー。僕はすごいんだから。レンくんでしょう?君の大切な人なんだから、追いかけなきゃ」
「大切な人…」