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触れてみたかったから(うたプリ)

第4章 4


1ヶ月後のデートを約束した翌日以降、神宮寺レンはぱったりと店にこなくなってしまった。

平日、夕方。
この店は今日も暇だった。
私は私物の安いクラリネットをカウンターで分解して、パーツの中で机に伏し寝そべていた。

「涼子ちゃん。最近レンくん…」
「知りませんって」
「あれー?この前のランチのときに…」
「どうしてそうなるんですか…」

どこかで同じことをしたような記憶がある。
異なるのは私の反応感度の違いだ。

「涼子ちゃん、具合悪い?」
「五月病です。問題ありません」
「それならいいんだけど、怪我だけはしないでね。ハンダ付けとか特に気をつけるんだよ。管楽器はガスバーナー使うんだから…。よくあんなことできるよねぇ…」
「しばらくハンダの予定はないので安心してください」
「…ならいいんだけど…」

店長はそう言って、奥のリペア室に入ってしまった。

バタン、と扉がしまったがすぐに扉が開き、店長がぬっと頭だけを突き出した。

「はやく元気な涼子ちゃんに戻ってね」

今度こそ店長はリペア室に入って行った。

「リペアか…」

唯一リペア待ちの楽器をちらりと盗み見た。
神宮寺レンのサックスである。
デートの約束を取り付けられた次の日、神宮寺レンが全体調整を依頼したものだ。
一ヶ月後に取りに来る、と言っていたのでまだ手を付けていない。
しかし、あと一週間くらいで約束の一ヶ月。
そろそろ取り掛からなくてはならない。

私はクラリネットを組み直し、神宮寺レンのサックスをフロア内のリペア台に上げた。
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