第3章 3
今日のランチはキノコのリゾット。
素朴な盛り付けと優しい味と香りが心とお腹を満たす。
ここの喫茶店のマスターの優しさが形になるとしたらきっとこんな感じだろう。
可愛らしい木製スプーンで一口、一口。
目の前に座る大型新人アイドルは相変わらず不機嫌そうな雰囲気を醸し出している。
表情はいつも通りだ。しかしいまこの人に楽器を持たせて演奏させたら、ブーブーと拗ねた音で奏でるだろう。
「黙りこくって不機嫌オーラだされても私はなにもできませんが」
ずっとこの調子でいられると美味しいものも美味しく食べられない。
「俺といるのになんで他の男の話をするの」
いつもの余裕ありげな口調とは程遠い、駄々っ子のような口調だった。
あまりに唐突な文句に、私は危うくスプーンの上のリゾットをこぼすところだった。
「他の男って…」
確かに龍也さんのことは話したが、そこまで過敏になることなのだろうか?
依然として神宮寺レンは不機嫌オーラを醸し出している。
こんなところで意地を張って放置していても疲れるだけだ。せっかくの昼休憩と美味しいリゾットがもったいない。
「ごめん。そんなに気に障ることだとは思わなかったよ」
「デートしよう」