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触れてみたかったから(うたプリ)

第3章 3


カランカラン…

「やぁ、子羊ちゃん」
「じ、神宮寺レン…」
「またそんな出迎え方かい?」

乾いたベルの音が迎えたのは、見慣れた長身だった。

「おや、レンくん久しぶりだね。ゆっくりみてってね」
「こんにちは、余語さん。ありがとうございます」

神宮寺レンは綺麗な笑顔で店長に挨拶した。

「…あー。そういえばフレットの打ち直しの作業があったような…涼子ちゃん、僕はちょっと奥のリペア室使うから、その間お店頼むよ」
「え、その修理ってまだ先でいいって…ちょっと店長!」
「フレットの打ち直しの作業は大変だからねぇ。早め早めのお仕事さ。涼子ちゃんも見習うよーに!よろしくねー」

そういって店長は店の奥のリペア室に引きこもってしまった。

「なにが早めだよ…いつもギリギリになって慌ててるくせに…」

STAFF ONLYとかかれた扉に恨み言をなげかける。

「やぁ、レディ。久しぶりだね。さみしかった?」
「さみしくはありません。なんで寂しくならなきゃいけないんですか」

私は特に意味もなく、パソコンに入力をしてある在庫データを眺める。
神宮寺レンはショウケースの中のサックスを眺めている。

「今日は、何か用でもあるの?」

ディスプレイから顔をあげて渋々常連客に声を掛ける。

「うーんそうだな…。レディの顔を見に」
「…そう。お好きにどうぞ、ごゆっくり」
「あれ、追い払わないんだ」

神宮寺レンは楽しそうな表情を浮かべカウンターの椅子に腰掛け、私の顔をじっと眺め始めた。

私も負けじと神宮寺レンの顔を眺めてやる。

「やだな、レディ。照れちゃうよ」
「そんなことイチミリも思ってないくせに」
「そんなことないさ。俺だって、恋してやまない人にそんな風にじっと見つめられたら照れる」

お互いになんとなく顔をそらし、気まずい空気が流れる。時計の針の音が目立って仕方ない。

すると、スタッフオンリーの扉が開いた。

「涼子ちゃん、そろそろお昼だから休憩いっておいで。お店番しておくから、外で食べてきてもいいよ」

店長はつかみどころのない笑顔を浮かべながらカウンターの椅子に腰掛け、コーヒーを飲みながら新聞を読み始めた。

「あ、えーと…」
「なんだ、これから休憩なら俺と一緒にランチにしよう」
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