第2章 2
「その…シャイニング事務所は恋愛禁止ってきいたことがあるんだけど」
「だから?…好きになって、付き合っちゃ、ダメってこと?」
「つ、付き合うって…!そんなことしたらやめさせられちゃうんでしょう?」
「そうかもしれないね、でも」
「でも?」
「触れてみたかったから」
彼は更に強く、私を抱きしめた。
「触れて…って…」
「涼子は俺に、触れてみたくないの?」
「それは…」
「あんな伝統なんて、意外ともろく崩れていったりしないかな」
なーんて!
と神宮寺氏はカラカラと笑いながら立ち上がった。
背中の肌寒さが少し心細く感じた。
「からかってたんですか?」
「さぁ、どうだろうね?」
彼は方をすくめながら、楽器を片付け始めた。
帰りはとてもあっさりとしていた。
森から抜けて、商店街に出て、すぐにさよなら。
「なんだっての…」
まだ首筋は、心の奥は、チリチリと灼けているのに。