第2章 2
「お待たせしました」
「シンプルだけど素敵だね、レディ。エプロンの上からだとわからなかったけど、とても良く似合ってる」
私のバイト上がりの格好のことだ。
店ではエプロンしか支給されていないので、カッターシャツと黒のタイトなパンツ、地味な歩きやすい黒のフラットシューズ。
こんな格好でこんな華やかな人と一緒に歩いていいのだろうか。
「さ、レディ」
そういって神宮寺氏は恭しくひざまずき、手を差し出した。
「いや、そういうのいいので…」
「そういう訳にはいかないな。手をとってくれなければ動けない」
無駄に抵抗しても時間がすぎるだけだ。
私は差し出された手を取る。
すると神宮寺氏は嬉しそうに柔らかく私の手を握り、歩き出した。