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触れてみたかったから(うたプリ)

第1章 1


「店長!?」

驚きのあまり、商品を詰めた袋を床に落としそうになった。

「いいって…店長、お店はどうするんですか!?」
「臨時休業でいいんじゃないかな?ゴールデンウィークも最終日だし、この暇さ加減は実質開店休業みたいなものだし…。今日くらい休んだって神様にもシャイニングさんにも怒られはしないよ」
「そんな適当な…」
「涼子ちゃん、ゴールデンウィーク中は本当に大変だったよね。お疲れ様。だからレンくんとリフレッシュしておいで。…はい、音也くん、弦交換終わったよ。試奏してみる?」
「ありがとう!早速弾いてみます!」

本当に、このゆるーい店長は…。

「…だって、子羊ちゃん。どうする?どうしてもダメだったら無理には誘わないけど」

神宮寺レンはそう言って私の手を柔らかく包み込み、私の目をしっかりと見据えていった。

「あ、あの…困ります…!」

音也の弾くギターの音色が元気よく店内を跳ねまわる。

「まぁまぁ、涼子ちゃん、せっかくだし行っておいで。人の好意を無碍に断るのは感心しないなぁ」

店長がするりとカウンターに入ってレジを打つ。

「余語さん!すごい!すごく弾きやすい!ありがとう!」
「いいえー。そんなに喜んでもらえるとこちらも嬉しいなぁ。磨いておくから、そこら辺のスタンドにかけておいてね。先にお会計お願いできるかな?」
「はいはーい!ちょっとまってて!」

音也はリペア台まで小走りでカバンを取りに行った。

「その翔くんの弓も僕が送っておくから、ささ、行った行った!」

店長は私のタイムカードを勝手に切って、嬉しそうに笑った。

「あ、ちょっと店長!なんてことを!」
「あれ?僕間違えて涼子ちゃんのタイムカード切っちゃったみたいだね。これはこれは、失敬」

ひとつも申し訳なさそうではない。

「もう、わかりましたよ。行きます。いくから神宮寺レン。手を離してください。準備します。店長、お先に失礼します」
「これは光栄だ、子羊ちゃん」
「うんうん。いってらっしゃい」
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