Fake Lovers 【ヒロアカ 相澤 R18】
第1章 潜入捜査1日目
イレイザーヘッド——こと、相澤消太。
現場で何度も背中を預け合い、時には仕事を終えた後に二人で居酒屋の暖簾をくぐることもある、あのイレイザーがなぜこんなところにいるのか。
動揺で固まるの視線に気づいたのか、相澤がふいと顔を上げじっとこちらを見つめた。
その黒い瞳が一瞬だけ小さく見開かれたのを、は見逃さなかった。
だが、彼はすぐにいつもの無表情に戻ると、すっと手を挙げて近くのボーイを呼び寄せた。
「あの子、つけてくれ」
「え? あ、あちらの娘ですか?」
ボーイは急な指名に少し驚いた顔をし、困ったように頭をかいた。
「申し訳ありません、あの子は今日が初出勤の新入りでして……接客もまだ不慣れですし、ご満足いただけるかどうか……別の慣れたキャストはいかがでしょうか?」
「いや、いい」
相澤は低く短い声でそれを遮り、ポケットから財布を取り出す素振りを見せた。
「好みだ。指名で頼む」
「……は、はい! かこ、かしこまりました! すぐにおつけします!」
ボーイの説得を一蹴し、有無を言わせぬ圧で指名を押し通した相澤。
は心臓が口から飛び出しそうなほどの動揺を隠しながら、ボーイに導かれゆっくりと彼の待つボックス席へと歩みを進めた。
(落ち着け、私……! 彼は私だと気づいて指名したの? それともただの偶然……? いや、あのイレイザーがこんな店にプライベートで来るわけがない。きっと彼も何かを追って……!)
頭の中で渦巻く思考を必死に押し殺し、は訓練された(精一杯の)プロの接客スマイルを貼り付けた。
「お待たせいたしました……。はじめまして、今日から入りました、……です。お隣、失礼してもよろしいですか?」
いつもなら居酒屋でカウンター越しに並ぶ距離だが、この距離感とこの衣装では体感温度が全く違っていた。
相澤はグラスの氷をカランと鳴らし、チラリとの顔とバニーガール姿を上から下まで視線でなぞった。
「……あぁ。座ってくれ」
胸元とハイレグのカットを気にしながら、はそっと相澤の隣に腰を下ろした。