第9章 確認しなければ
「……家入。確認したいことがある」
「はいはい。で、何?」
硝子に促され、脹相は机の上に置かれた包装へ視線を落とした。
使い方なら、受肉した肉体に残る記憶から知識として理解している。問題はそこではない。
「……やはり、これはコンドームなのか」
「は?」
「いや……」
脹相は眉間に皺を寄せた。
そもそも、自分の身体にはまだ毒素が残っている可能性がある。彼女を傷つける危険が少しでもあるのなら、抱くつもりはなかった。
「……俺はまだ、体液に毒があるかもしれない。だから、あいつを抱くつもりはない」
硝子は、くわえていた煙草を指で挟み、呆れたように目を細めた。
「……あんた、本人を前にしてそんなにはっきり言うの?」
「重要なことだろう」
「まあ、そうだけどさ」
硝子は机に置かれた資料を引き寄せた。
「前に採取した検体の検査結果は教えたんだったけか?」
「いや、まだ」
「あんたの体液に、今回問題になっているような毒性成分が含まれていないことは確認できてる。今のところ、毒の成分が見つかっているのは血液のほうだけだ」
「……本当に、体液には問題がないんだな?」
「少なくとも、今までの検査ではね。ただし、検出できていない成分まで絶対にないとは言い切れない。それに、体液が彼女の身体にどう影響するか、その立証はまだ終わってない」
硝子はそこで言葉を切り、脹相を見た。
「そこは今後、追々調べていけばいい。必要以上に先回りして不安になることもないんじゃない?」
「…………」
「それに、適切な避妊具を使うことも選択肢の一つだよ。もちろん、それだけであらゆるリスクを防げるわけじゃないけどね」
脹相は難しい顔で黙り込んだ。
彼女の身体に問題がないと確認できるまでは、安易な判断をするつもりはない。
それだけは、変わらなかった。
「……まあ、あんたがそうやって慎重になる理由はわかるけどさ」
硝子は煙草の煙を吐き出した。