第10章 今は別で
「……会いたい」
思わず呟いたとき、五条が部屋を訪ねてきた。
「彼女と連絡とれた?」
「ああ。……あいつは、前向きだった」
「寂しくないわけないのにね」
「……それが余計に堪える」
五条は少し笑った。
「それだけ君のことが好きなんでしょ。離れてたって、恋人なのは変わらないんだからさ」
「……ああ」
分かっている。それでも、隣に彼女がいないのは落ち着かない。
数日後、高専で彼女を見かけた。
楽しそうに誰かと話す姿に、安心すると同時に、少し寂しくなる。
あの笑顔を一番近くで見られたのは俺だったのに。なんて幼稚なことも考えた。
その夜、彼女からメッセージが届いた。
『今日、高専で見かけたよ! 話しかけたかったけど、ちゃんと我慢した!』
俺は思わず笑った。
『俺も見かけた。本当は話したかった』
すぐに返信が来る。
『私もだよ! 次に五条家に行けるときは、絶対に会いにいくね!』
画面を見つめ、俺はそっと息を吐いた。
会いたい。声が聞きたい。抱きしめたい。
けれど、今はまだ我慢しなければならない。
『待っている。』
そう送ると、彼女から明るい返事が届いた。
『うん! 楽しみにしててね!』
俺は携帯電話を胸元に置き、目を閉じた。
寂しさが消えたわけではない。
それでも、彼女も俺に会いたいと思ってくれている。それだけで、少しだけ心が軽くなった。
――早く会いたい。
次に顔を合わせた時、お前がいない毎日は、思っていたよりずっと寂しいのだと伝えたら、お前はどんな顔をするだろうか。