第8章 脹相のやりたい方法で
研究道具を片づけていたとき、私はふと思い出したように棚の引き出しを開けた。
「あ、そうだ。脹相、ちょっと見て」
「なんだ?」
私は小さな包装を取り出し、彼に見せた。
「実はこれ、硝子さんにもらっていて」
脹相はその見た目に、まさかと思って受け取り、表と裏を確かめるように眺めた。
どう見てもコンドームにしか見えない。
「…一応聞くが、これは?」
「検体を採取するためのものだよ。凝固剤が使われていないから、採取したものをそのまま検査に回せるんだって」
「あ、ああ。なるほど。研究に使うものか」
「ただ……」
私は少し言いよどんでから、困ったように笑った。
「通常のものよりも厚めらしいから、使っても大丈夫って硝子さんはいうんだけど、その…使ってみる?」
言い終わると、急に恥ずかしくなって、私は包装を見つめた。
脹相はしばらく黙っていた。
「……お前は、時々すごいことをさらりと言うな」
「えっ? だって、検体をちゃんと採れる方法があるなら、試してみたいし……」
「体液が直接触れなければいいんだから、脹相がしたい方法でするのが一番いいと思うよ」
「……は?」
脹相がこちらを向いた。
「だから、脹相が一番やりやすい方法でいいってこと。検体は採取できればいいんだし」
私は何でもないことのように笑った。
「せっかく硝子さんにもらったものだし、使えそうなら試してみたいなって」
「…………」
脹相は黙り込んだ。
彼女はきっと、純粋に研究のことを考えているのだろう。
検体を採取するため。毒素の有無を調べるため。
それはわかっている。
わかっているのだが。