第7章 研究があるから触れられる
――体液を求められることが嬉しいというよりも、こうして彼女と過ごせることが嬉しいのかもしれない。
研究という理由があるから、彼女は俺の身体を気遣い、触れ、時間をかけて向き合ってくれる。
そして俺も、彼女に触れていいのだと教えてもらえる。
その時間が、いつの間にか特別なものになっていた。
「……なあ」
「ん?」
「次に必要になったときも、遠慮なく言ってくれ」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
「もちろん。でも、脹相が嫌なら無理にお願いしないよ?」
「嫌なわけがない」
思わず即答すると、彼女は目を丸くした。
脹相は少しだけ視線を逸らしてから、静かに続けた。
「お前が俺のために時間を使ってくれるのも、触れてくれるのも……俺は嬉しいんだ」
「……脹相」
「だから、俺もお前に触れていたい。もちろん、お前が嫌でなければ」
彼女は一瞬驚いたあと、ふわりと笑った。
「嫌なわけないよ。私だって、脹相に触れてもらえるのは嬉しいもん」
そう言って、今度は彼女のほうから彼の胸に寄り添った。
脹相は彼女を抱きしめ、そっと頭を撫でた。
研究のために始まった、体液の採取。
けれど今では、その時間は二人が気持ちを確かめ合う大切な時間にもなっていた。
そして脹相は、彼女にはまだ言っていないことを、心の中でそっと呟く。
――次に頼まれるのが、今から楽しみだ。
もちろん、それは研究に協力したいからだけではない。
彼女が自分を求めてくれることも。
自分から触れていいと、笑って許してくれることも。
そのすべてが、どうしようもなく嬉しかった。