第7章 研究があるから触れられる
「脹相、ちょっとこっちに来て」
「ああ」
彼女に呼ばれて近づくと、彼女は採取の準備をしながら、俺の手にそっと触れた。
「大丈夫? 疲れてない?」
「問題ない」
「本当に? 無理はしないでね」
彼女はそう言って、俺の頭を優しく撫でた。
ただそれだけなのに、脹相は妙に落ち着かなくなる。
彼女は研究に集中していて、特別な意味などないのかもしれない。
それでも、自分を気遣いながら触れてくれる、その手が好きだった。
「……脹相?」
「なんだ」
「もしかして、緊張してる?」
「多少はな」
正直に答えると、彼女はくすっと笑った。
「じゃあ、私が手伝ってあげる」
そう言って彼女は彼の手を握り、安心させるように指先を撫でた。
「脹相、…触っていいんだよ?」
「……いいのか?」
「うん。脹相ならいいよ」
その言葉を聞いた瞬間、脹相は返事に詰まった。
彼女はいつも、自分から触れてくれる。
そして、俺も触れていいのだと、当たり前のように伝えてくれる。
脹相にとって、それは何よりも嬉しいことだった。
自分から触れて、嫌がられないだろうか。
もっと近づきたいと思っても、困らせてしまわないだろうか。
そんなことを考えてしまう俺に、彼女はいつも安心をくれる。
「……ありがとう」
脹相は遠慮がちに彼女の手を握った。
「うん」
彼女が笑う。
その笑顔を見て、脹相の胸が温かくなった。