第1章 キス
「……本当に、したいのか」
「うん。大好きだもん」
「……そうか」
彼は私の頬に手を添えた。
「……俺も、お前と口づけを交わしたい」
その言葉が嬉しくて、私は目を細めた。
「じゃあ、遠慮なく」
脹相は少し照れたように視線を落とし、それから、ゆっくりと顔を近づけた。
唇が優しく触れる。
いつもと変わらない、温かなキス。
一度離れたあと、彼は私の顔をじっと見つめた。
「……大丈夫か」
「うん。何ともないよ」
私は微笑んで、彼の頬にそっと触れた。
「これからも、気になることがあったら硝子さんと一緒に確認していこうね。だから、ひとりでずっと怖がらなくてもいいんだよ」
「……ああ」
「私、これからも研究を続けていくんだから。脹相が安心できるように、一緒に考えることなら、いくらでも付き合うよ?」
少しいたずらっぽく笑うと、彼は困ったように眉を下げた。
「……お前は、本当に俺を安心させるのが上手いな」
「そう?」
「ああ。……だが、同時に心配にもなる」
「もう、心配性なんだから」
私が笑うと、脹相は小さく息を吐いた。
そして、私の髪を撫でながら、ぽつりと呟く。
「……それでも、お前が俺と一緒にいる未来を考えてくれていることが、嬉しい」
「ふふっ。私にとっては当たり前のことだよ」
私は彼をぎゅっと抱きしめた。
「脹相がいる未来がいいんだもん」
彼は一瞬だけ目を見開き、それから、耳まで赤くなりながら私を抱きしめ返した。
「……お前は、本当に……」
「なに?」
「……俺を、どうしようもなく幸せにする」
その声があまりにも優しくて、私は彼の胸に顔を埋めた。
頭の上から、穏やかな声が降ってくる。
「……俺も、お前の夢を応援する。お前が研究を続ける姿を、そばで見ていたい」
「うん」
「そして、お前が帰ってきたら、こうして抱きしめたい」
「うん」
「……これからも、ずっと」
私は彼の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返した。