第1章 キス
「……だが、調べてくれていたんだな」
「当たり前でしょう?」
私は彼の肩に寄りかかった。
「私の未来には、脹相もいるんだもん」
「……!」
「家に帰ったら脹相がいて、二人でご飯を食べて、一緒に眠るの」
彼の顔を覗き込む。
「そんな毎日が、これからも続いたらいいなって思ってるよ」
脹相は何も言わず、私を抱き寄せた。
その腕が、少しだけ強くなる。
「……俺は、お前の夢を邪魔したくない」
「邪魔なんかじゃないよ」
「だが、俺の身体のことまで研究するとなれば、お前に余計な負担をかけることになるかもしれない」
「脹相」
私は彼の胸から顔を上げた。
「これは私が自分で選んだことなの。誰かに頼まれたからでも、脹相に言われたからでもないよ」
彼の目を見つめ、ゆっくりと言葉を続ける。
「自分の身体を知ることも、研究を続けることも、私が進みたい道の一部なんだよ」
「……ああ」
「だから、不安になってもいいから、一緒にいよう?」
脹相はしばらく私を見つめていた。
やがて、小さく頷く。
「……分かった。お前が自分で選んだ道なら、俺は応援したい。お前が研究を続けたいのなら、その夢を大切にしたい」
「ありがとう」
「……ただし、自分の身体を使うからといって、無理はするな。何か異変があれば、すぐに家入に相談してくれ。そして俺にも…」
その真剣な表情に、私は思わず笑った。
「ふふっ、分かってるよ。無理をしないことも、研究を続けるうえでは大切だからね」
「……本当か?」
「本当」
「……ならいい」
脹相はようやく安心したように息を吐き、私の髪を優しく撫でた。
「……ありがとう。俺のことを、そこまで考えてくれて」
「ううん。私も脹相と一緒にいたいからだよ」
私は彼の首に腕を回した。
「ねえ、脹相。キスしてもいい?」
彼は私の唇を見つめた。
まだ、ほんの少しだけ迷いがある。
それでも今度は、すぐに目を逸らさなかった。