第5章 秘密にしたほうがいい
それから数日後。
私は研究資料を抱えて、医務室から廊下へ出た。
朝からずっと作業をしていたせいで、肩も目も痛い。
早く帰りたい。
お風呂に入って、脹相の隣でゆっくりしたい。
そんなことを考えていると、前方から脹相が歩いてきた。
「あ……」
思わず声が出そうになる。
彼も私に気づき、視線が重なった。
本当なら、笑いかけたい。
今日もお疲れさま、と伝えたい。
できることなら、今すぐ抱きつきたい。
けれど、廊下にはほかの人もいる。
私は小さく頭を下げた。
「……お疲れさまです」
「ああ。……お疲れ」
それだけだった。
すれ違って、終わり。
胸の奥が、きゅっと痛くなる。
その頃、脹相もまた、振り返りたい気持ちを必死に抑えていた。
けれど、二人で決めたことだ。
今は我慢しよう。
帰れば、会えるのだから。
そして夜。
玄関の扉を開けると、リビングから足音が聞こえてきた。