第5章 秘密にしたほうがいい
「あれ、脹相。珍しいね。どうしたの?」
五条はいつものように軽い調子で迎えたが、脹相の表情を見ると、すぐに椅子を勧めた。
「……相談したいことがある」
脹相は、恵から忠告されたことを話した。
「……俺は、あいつとの関係を隠したいわけではない」
「だが、あいつが俺の恋人でいることで危険に晒されるのなら……俺は、どうすればいい」
脹相が俯くと五条は少しだけ真面目な顔になった。
「恵の言うことはもっともだよ。君を排除したい連中が、彼女を利用しようとする可能性はある」
「…………」
「それに公にする必要はないでしょ。信頼できる人だけが知っていればいい。君たちの気持ちまで隠す必要はないんだから」
「……そうか」
脹相は静かに立ち上がった。
「五条、感謝する」
「どういたしまして。彼女のこと、よろしくね」
「ああ。必ず守る」
その夜、脹相は、ソファに座っていた私の隣に腰を下ろした。
「……おかえり。脹相、どこか行ってたの?」
「五条に相談していた」
「五条さんに?」
脹相はゆっくりと小さな彼女の手を取った。
「……お前に、話しておきたいことがある」
いつもと違う真剣な表情に、私は自然と背筋を伸ばした。
「伏黒から言われたんだ。俺と付き合っていることや、一緒に暮らしていることは、あまり周囲に知られない方がいいと」
「……え?」
脹相は、私の手を優しく握り直した。
「俺を快く思っていない人間がいる。お前が俺の弱点だと知られれば、利用されるかもしれない」
私はしばらく黙っていた。
脹相が危険な立場にいることは知っていた。けれど、私たちの関係が、彼を追い詰める材料になるかもしれないなんて考えたこともなかった。
「……五条にも相談した。俺たちの関係を、信頼できる人間以外には話さない方がいいそうだ」
「そっか……」
私は彼の手を握り返した。
「分かった。私も気をつけるね」
「……いいのか?」
「うん」
私は彼の肩に寄りかかった。
脹相が息を呑む気配がした。
「私は、脹相と一緒にいたい。そのためなら言えなくても構わないよ」
「……」
そう言って顔を覗き込むと、彼は少し困ったように笑い、私をそっと抱きしめた。
「……ありがとう」
その声があまりにも優しくて、私は彼の背中に腕を回した。