第5章 秘密にしたほうがいい
高専の廊下で、脹相は伏黒恵と出会った。
「脹相。最近、あいつとちゃんと過ごせてます?」
「ああ。……だが、研究で忙しいようだ」
「やっぱり。あいつ、昔から一つのことに集中すると周りが見えなくなるんで。飯もまともに食べてないときがあるみたいだし」
脹相の表情が曇った。
「……そうなのか」
「家では無理させてないすよね?」
その言葉に、脹相は口を閉ざした。
帰ってきた私を抱きしめ、もう少しだけと引き留めてしまうことがある。疲れていると分かっていても、寂しさに負けてしまうのだ。
「……気をつける」
「お願いしますよ。あいつ、あんたのことが好きだから、無理すると思うんで」
「ああ……分かっている」
恵は少しだけ表情を引き締めた。
「あ、それと、もう一つ。あんたとあいつが付き合っていること、あまり周りに知られない方がいいかもしれません」
「……どういう意味だ?」
「上層部には、あんたの存在を消したいと思ってる人間もいるでしょう。あんた一人なら自分で対処できても、あいつが人質に取られる可能性だってゼロじゃない」
脹相の顔から、血の気が引いた。
「……!」
「あんたをおびき出すために、あいつが利用される可能性だってあります。二人で暮らしていることも、できるだけ知られない方がいい」
脹相は拳を握りしめた。
自分が危険に晒されることは構わない。
だが、私だけは違う。
「……俺は、を守りたい」
「だったら、守り方を考えてください」
恵は静かに告げた。
「俺は、あいつが大切な人と幸せに暮らしてほしいと思ってます。だからこそ、気をつけてほしいと思ってる」
恵が去ったあとも、脹相はその場に立ち尽くしていた。
彼女との関係を隠したいわけではない。
むしろ、恋人であることを誇りに思っている。
それでも、自分のせいで彼女が傷つく可能性があるのなら。
「……五条に相談するか」
脹相は、五条悟のもとへ向かった。