第5章 秘密にしたほうがいい
「……行ってくるね、脹相」
朝日が差し込む寝室で、私はベッドに横になる脹相の頬に軽く口づけた。
「もう行くのか」
「うん。硝子さんに頼まれてる資料があるから。今日は少し早めに行かないと」
そう言って笑うと、脹相は私の手をそっと握った。
「……無理はするなよ」
「分かってる。帰ったらいっぱい甘えるから」
「……約束だぞ」
「うん、約束」
もう一度キスをして、私は家を出た。
脹相の身体に含まれる毒素について調べることは、彼自身を守ることにもつながる。そう考えた私は、本人の了承を得て、硝子さんの研究を手伝わせてもらっている。
けれど、研究に夢中になるあまり、帰宅は日に日に遅くなっていた。
その日も、脹相が帰宅した頃には、私はまだ高専に残っていた。
テーブルには、二人分の夕食が並んでいる。
脹相はスマートフォンに届いたメッセージを見つめた。
『ごめんね、もう少しかかりそう。先に寝てて!』
「……そうか」
怒っているわけではない。
自分のために頑張ってくれていることは、よく分かっている。
それでも、以前のように一緒に食事をしたり、帰ってきた私が胸に飛び込んできたりする時間が、恋しかった。
「……寂しい、など」
小さく呟き、脹相は冷めた夕食に目を落とした。
そんな翌日の夕方。