第4章 ※もう一度検体を
「お前が起きているうちに抱きしめられるのは……久しぶりだからな」
言い終えてから、脹相は自分の言葉が少し情けなく思えた。
こんなことを言えば、彼女はきっと気にする。
もっと一緒にいようと、無理をしてしまうかもしれない。
そう思ったのに。
「……そっか」
彼女の声は、驚くほど優しかった。
「じゃあ、今日はいっぱい抱きしめてね」
「…………え?」
「私も、脹相にぎゅってしてもらうの、好きだよ」
彼女はそう言って、彼の腕を両手でそっと握った。
「……だから、遠慮しないで?」
脹相は、しばらく何も言えなかった。
胸がいっぱいだった。
彼女が自分の気持ちを受け止めてくれたこと。
自分を責めるのではなく、こうして一緒にいたいと言ってくれたこと。
何より、彼女が自分との時間を、ちゃんと大切に思ってくれていたこと。
「……お前は」
ようやく声を出す。
「……本当に、ずるいな」
「えっ? 私、何かした?」
「……いや」
彼は彼女の肩に顔を埋めた。
「……何もしていない」
ただ、好きなのだ。
どうしようもないほど。
彼女が笑ってくれることも。
自分を頼ってくれることも。
こんなふうに、何気ない言葉で胸をいっぱいにしてしまうことも。全部
「……もう少し、このままでいいか?」
「うん。もちろん」
彼女はすぐに答えた。
「……脹相、大好きだよ」
その言葉を聞いた瞬間、彼は思わず目を閉じた。
眠っている彼女に向かって、何度も囁いた言葉。
本当は、起きている彼女から聞きたかった言葉。
今、それが自分の耳に届いている。
「……俺もだ」
脹相は、彼女の肩にそっと頬を寄せた。
「……大好きだ」
今度は、彼女にも聞こえるように。
そして、彼女の温もりを確かめるように、もう一度、優しく抱きしめた。