第4章 ※もう一度検体を
「……すまない。思ったより時間がかかっている」
「大丈夫だよ。急がなくていいからね」
そう言って近づくと、脹相は私の手をそっと取った。
「……実は」
「うん?」
彼はしばらく言いよどんだあと、覚悟を決めたように口を開いた。
「最近、お前と……あまり触れ合えていないだろう」
「……え?」
思いがけない言葉に、私は目を瞬かせた。
脹相は私の手を握ったまま、少しだけ俯いている。
「朝は早く出ていくし、帰ってくる頃には疲れている。お前が頑張っていることは分かっているから、邪魔をするつもりはない」
「……脹相」
「だが……その」
彼の耳が、じわじわと赤くなっていく。
「……お前を意識してしまうと、どうにも思うようにいかない」
「…………」
「久しぶりに、こうして二人きりになったからかもしれないな」
最後のほうは、ほとんど囁くような声だった。
私は、彼の言葉をゆっくりと胸の中で受け止めた。
そうだったのか。
彼は、私が思っていた以上に寂しい思いをしていたのかもしれない。
研究に夢中になっている間、私は彼の気持ちにきちんと気づけていなかった。