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③呪術廻戦〜脹相と恋人と絡み〜

第4章 ※もう一度検体を 



それからしばらく経った。

「……ねえ、脹相」

夕食を終え、リビングで隣に座っていた彼の袖を、私はそっと引っ張った。

最近は、研究室にいる時間が長くなってしまった。

朝は彼が起きる前に家を出て、帰宅する頃には彼が眠そうにしている。

ゆっくり話す時間も、手をつないで過ごす時間も、以前よりずっと少なくなっていた。

それでも、研究は順調だった。
だからこそ、今日もひとつ、お願いをしなければならない。

「……あのね。お願いがあるんだけど」

「……なんだ?」

脹相がこちらを向く。

私は膝の上で指を組み、少しだけ視線を落とした。

「……もう一度、体液を分けてもらえないかな」

「…………」

脹相の表情が、ぴたりと止まった。

「……またか?」

「う、うん……。ごめんね」

慌てて顔を上げる。

「でもね、今の研究結果がすごくいい数値になっていて……! もう一度検査して、同じ結果が出るか確認できたら、硝子さんに報告を出せるの」

「……そうか」

「もちろん、無理ならいいんだよ? 何度もお願いして申し訳ないし……」

「いや」

脹相は小さく首を横に振った。

「お前が必要としているんだろう。なら、協力する」

「……脹相」

「ただし、無理なことはするな、それが条件だからな」

「うん! ありがとう!」

嬉しくなって笑うと、彼は一瞬だけ目を細めた。

けれど、すぐに何かを思い出したように視線を逸らす。

「……少し待っていてくれ。用意してくる」

「あっ、うん。ありがとう!」

彼は立ち上がり、自室へと向かった。

その背中を見送りながら、私はさっそく頭の中で検査の手順を整理し始めた。

今度こそ、再現性を確認できるかもしれない。

そう考えると、どうしても気持ちが急いてしまう。

……けれど。
そのときの私は、脹相が自室でどれほど困っているのか、まだ知らなかった。
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