第3章 寝ている時だけは
「……脹相、落ち着く」
「そうか」
「うん……」
眠気に負けそうになりながら、私は彼の服をきゅっと握った。
「……大好き」
その言葉を最後に、私の声は聞こえなくなった。
「……?」
脹相が小さく呼びかける。
返事はない。
すぐそばから、穏やかな寝息が聞こえてきた。
「……もう寝たのか」
思わず、苦笑が漏れる。
つい先ほどまで、眠い目をこすりながら一生懸命に今日の出来事を話そうとしていたのに、今ではすっかり夢の中だ。
脹相は枕に頬をつけたまま、腕の中の彼女を見つめた。
眠っているは、いつも俺の腕の中にいる。
脹相は、そんなことを思った。
起きているときの私は忙しい。
朝は慌ただしく出かけていき、帰ってくる頃には疲れ切っている。
それでも、顔を合わせれば笑ってくれる。
名前を呼べば振り向いてくれるし、抱きしめれば嬉しそうに腕を回してくれる。
頬にキスをすれば、恥ずかしそうに笑う。
ときには、俺のほうから甘えてほしいとお願いすることだってある。
そのたびに、お前はいろんな反応を見せてくれる。
俺の知らない表情を見せてくれることもある。
だから、もっと見ていたいと思う。
もっと話したい。
もっと触れたい。
……もっと、俺のことを見ていてほしい。
けれど、目の前で眠るお前は、そんな俺の気持ちなど知らない。
安心しきった顔で、俺の胸元に頬を寄せている。
何もかもが愛おしかった。