第1章 その胡蝶、閨の教育係にて
キィ─···と、小さくしなり鳴る朱色の木製の扉を開ければ、微かに薫る香の匂い。
「さぁ、壬氏様がお待ちです」
「えぇ」
が小さく返答すれば、水蓮はすっと部屋を後にして扉を閉めた。
パタン、と無機質な音が響いた。
(行くっきゃありませんね)
は意を決して、足を一歩踏み出した。
「これはお仕事これはお仕事これはお仕事これはお仕事···」
「聞こえているぞ。」
下を見ながらぶつくさ呟いて部屋の中を進めば、声代わりを終えた壬氏の声に、ハッとは顔を上げた。
視線の先には、を見据える憂いた紫色の瞳が捉えている。
薄桃色の閨着の袖に腕を通して頭をさげた。
「···、壬氏様。いえ、華瑞月様、とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「壬氏でいい···と、言うか。お前は相変わらず思って事が口に出るんだな?」
「顔を上げろ」壬氏の声に、が顔を上げると、寝台から壬氏が近づいて、をジッと見据えた。
女性として成長してはいても、まだ幼さが抜け切らない顔立ちに、漢服の合わせからほんのり見える谷間と大人びた化粧は少々グッと来る物があった。
確かに、帝の言う通り、美しく育った。
育ったが性格の根っこを知っているせいか、果たしてに欲情出来るか否かと言われれば試して見ないとわからない、と言った所だ。
「お久しぶりです。壬氏様、で···ヤリますか?」
「···、お前なぁ」
「呟いておりました通り、【お仕事】しなければ、私はここから出る事が出来ないのですよ」