第1章 その胡蝶、閨の教育係にて
(本当に、気が乗らない···)
妃教育の賜物で、今ははんなりとか弱い胡蝶のような雰囲気に、同性の女官達からも見蕩れられているが、実は本性は飛んだじゃじゃ馬娘である。
木登りは好きだし、魚釣りも。
虫も苦手ではないし、蛇やカエルだって物ともしない。
刺繍やお筝、二胡を弾くなら体を動かしていた方が好きだし、父から教わった武術も中々の物であり、棒術だったら負ける気はしない。
なのに、姫として後宮に召し上がってしまった。
求められるのは社交と腹の探り合い。
が欲しいものとは全くの真逆だった。
しかし、姫に召し上がってしまったからには、例え下級妃でも仕事は仕事であり、腹を括った。
そして腹を括った挙句によこされた仕事は、王弟の閨教育係とか言うぶっ飛んだ仕事だった。
(19歳なら要らないでしょうに。閨教育係なんて···)
何だったら自分でどうにか出来る年頃だ。
「姫様、お支度整いました」
「···ありがとう」
考えても仕方があるまい、とため息一つ。
自室を後にして、壬氏の寝所へと足を向けた。
❖・❖・❖
寝所へ着くと、ノックもしていないのに水蓮が静かに扉を開けた。
「お待ちしておりました」
それだけで水蓮は何も言わずに、瞳を細めて笑みを浮かべるだけだ。
「どうぞ、よしなに」
「こちらへ」
案内された扉の先に、もう何年も会っていない幼なじみがいるのだと思えば、今更ながらどんな顔をして会えばよいのか、は少々困惑してしまう。