【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第1章 OPERATION①
「何に乾杯しますか?」
そう言ったロイドの碧眼が少し細くなる。
「もちろん今日はロザリンデ夫人に」
先ほどの喜劇の登場人物を名指しする彼女が気に入った。
「では僕はアイゼンシュタイン氏に」
休息を楽しませてくれた喜劇の登場人物たちに、二人はグラスを合わせた。
騙し、騙されるのがこの世の常ならば、それならどこまでも喜劇を演じた方が面白い。
今夜は、ただ一杯の酒で終わるはずだった。
「そういえば、今夜の『こうもり』はいかがでした?」
「なかなか愉快な喜劇でしたね」
「ふふっ。特にどの辺りが?」
「自分は妻を欺いているつもりで、実際には妻に出し抜かれていたところでしょうか」
「あら、奥様の方が一枚上手だったということね」
「ええ。あれほど見事に騙されては、夫も立つ瀬がありませんね」
「では、あなたなら見破れたかしら?」
「……そうですね。少なくとも、妻の顔くらいは見分けたいものです」
「ふふっ。それは頼もしいわ」
彼女は小さく笑って、グラスに唇を付けた。
一口飲んだ後に、ふっと小さく息を吐く。
「…私なら、最後まで騙して終わらせるわ」