【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第1章 OPERATION①
そのからかうような笑みに眉をひそめたが、不快ではなかった。
名前も知らない女から奢られる一杯。
深入りするつもりもない今夜の休息には、ちょうどよかった。
ロイドは彼女の隣に座り、背を椅子に預けて大きく息を吐いた。
「では、お言葉に甘えて。スコッチをロックで」
「あら、遠慮しないのね」
「奢ってくださると言ったのは、あなたでしょう?」
「ふふっ。そうだったわね」
彼女はロイドの分のスコッチを頼むと、自分にも同じものを注文した。
自分と同じ酒を選んだ彼女を、ロイドは少し意外そうに見た。
「あなたも同じものを?」
「ええ。今日は楽しく飲めそうです」
彼女はカウンターに肘をつきながら、ロイドを見て笑った。
ころころと表情を変える彼女は、普段から他人を分析するロイドにも、どこか掴みどころがなかった。
どの姿が素の彼女なのだろう。
そんなことを考えていると、二人の前にスコッチが置かれた。
ロイドがグラスを持つと、彼女も同じように手に取った。
ロイドはそこで、彼女について深く考えることをやめた。
今は仕事中でもないし、彼女はターゲットでもない。