【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第4章 OPERATION④
「……なに?」
セリーナはロイドの手首を掴んだまま、顔を後ろに向けた。
ロイドは伸ばした手を握りしめていた。セリーナはロイドを見た後、その拳に視線を移した。
「…糸くずが付いていた」
ロイドはそう言って拳を開くと、手のひらには服の繊維のような糸くずがあった。
セリーナはその糸くずを目を細めて見ていたが、やがて「ありがとう」とロイドに礼を言って、彼の手首を離した。
ロイドはそんなセリーナに笑顔を向けていたが、内心では心臓が尋常ではないほど激しく脈打っていた。
セリーナが背を向けた時に、ロイドは自身のスーツの袖の内側に指先で触れた。
彼女に仕掛けようとしていた盗聴器を、咄嗟に袖の中に隠したのだ。
――隙がないなんて簡単な言葉じゃない。
ロイドは対象者に盗聴器を仕掛けようとして、手首を掴まれたのは初めてだった。
自分をじっと見ているロイドに、セリーナは気が付いた。
そしてニッコリ笑ってロイドに言った。
「…出ましょうか」
「…ああ…そうだね」
ロイドも微笑みを保ちながら、彼女の背中に手を添えた。
仲良く出勤する恋人のように、二人はセリーナのアパートメントを出て行く。