【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第2章 OPERATION②
「…承知しました…ヴァルター大臣」
セリーナが押し殺した声でそう言うと、ロイドはゆっくりと振り返り、セリーナを見下ろした。
セリーナは怒りに歪んだ目元でロイドを見上げる。
ロイドはじっとセリーナを見た後、ゆっくりと唇を動かした。
セリーナは咄嗟にロイドの唇の動きを追った。
『今夜、あのバーで』
セリーナにだけ届く小声で、ロイドははっきりとそう告げた。
そのロイドの言葉は、余計にセリーナを苛立たせた。
セリーナは踵を返すと、そのまま重厚な扉を開けて出て行った。
セリーナが出て行った後も、ロイドはすぐにフリードリヒへ向き直って笑みを浮かべ、代わりの秘書官が来るまでたわいもない話をしていた。
東国商務省の本庁舎から少し離れた敷地の奥に、一棟の建物があった。
本庁舎のような装飾はなく、灰色の石造りの外壁には窓が等間隔に並んでいた。
三階建ての建物の正面には、『対外経済資料管理棟』と記された小さな銅製の看板が掲げられていた。
商務省の職員でさえ、ここを訪れる者はほとんどいなかった。
表向きは、外国との貿易記録や機密文書を保管するための施設。
しかし、その実態は東国情報総局(OID)の工作員たちが利用する、国家直属の諜報活動拠点だった。