【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第1章 OPERATION①
バーリントの夜風がロイドのブロンドを撫でた。
ロイドはすでに先客がいることに気が付いた。
バルコニーの手すりには、一人の女性が寄りかかっていた。
深いワインレッドのイブニングドレスは、細い腰のラインに沿い、裾に向かって緩やかに広がっている。
艶やかな栗色の長い髪は、毛先だけが柔らかく波打ち、白い肩へと流れていた。
耳元には小ぶりな真珠のイヤリングが揺れ、派手な装飾を纏わずとも、どこか気品を感じさせる。
やがて女性が振り返ると、長いまつ毛に縁取られた琥珀色の瞳がロイドを捉えた。
すっと通った鼻筋に、形の良い唇。
女性は突然現れたロイドに驚く様子もなく、穏やかな微笑みを浮かべた。
彼女の傍らには、連れの姿が見当たらなかった。
自分と同じように、一人でオペラを鑑賞しに来たのだろうかと、ロイドは少し意外に思った。
「こんばんは。よく来られるのですか?」
不自然にならない程度の軽い挨拶。
ロイドは東国に複雑な感情を抱いていたが、そこに暮らす人々まで憎んでいるわけではない。
適度な距離を保って彼女の隣に立つと、女性も特に気にする様子はなかった。