【SPY×FAMILY】オペレーション・ヴェール【R指定】
第1章 OPERATION①
「このオペラ劇場が好きで、定期的にチケットを購入しているんです」
「…よい趣味を持っていますね」
二人の間に夜風が流れると、ロイドはもう少しだけ話を続けた。
「今夜の演目は『こうもり』でしたね」
「ええ。夫婦が互いを欺くお話だとか」
「随分と物騒な夫婦ですね」
「ふふっ。夫婦なんて、多少の秘密があるくらいが上手くいくのではなくて?」
「……さて、どうでしょうね」
彼女の声は穏やかで、耳に心地よく響いた。
束の間の休息に、ロイドは肩の力を抜いてバーリントの夜景を眺めた。
彼女の視線も自然にロイドから夜景に移る。
互いに干渉することのない静かな時間は、今夜の息抜きにちょうどよかった。
開演前のブザーが鳴ると、彼女はバルコニーの手すりから離れた。
「では、よい時間を」
そう言って、人混みの中に紛れていく背中を、ロイドは見送った。
ロイドもフランキーが取ってくれた席に深く腰を下ろす。
『こうもり』は初めて観る演目だったが、先ほどの会話もあって、幕が上がるのを少し楽しみにしていた。