第4章 雄英体育祭編
「……まだ先は長い」
彼女は小さく呟いた。
目の前には、巨大なロボ・インフェルノ。
その巨体を避けながら進んできたものの、コースはまだまだ続いている。
周囲では、生徒たちが必死に走っていた。
「うおおおお!!」
「どけぇぇ!!」
「先に行かせてもらうぞ!!」
誰もが一秒でも早く前へ進もうとしている。
そんな光景を眺めながら、彼女は、ふと足元に視線を落とした。
「……」
倒れているロボ・インフェルノ。
その足裏。
「……ん?」
よく見ると、そこに小さな装置がついている。
彼女はしゃがみ込んだ。
「起動装置……?」
指先で軽く触れる。
カチ…小さな音がした。
彼女の目が輝く。
「……面白いこと思いついた」
普通なら、巨大ロボを倒す。避ける。乗り越える。
そう考えるところだ。
しかし、彼女は違った。
(これ……動かせるんじゃない?)
ロボット。
つまり――機械を個性で操作し、干渉できる。
(このまま利用できたら……)
彼女の脳内で、瞬時に計算が始まる。
徒歩で突破する。
→時間がかかる。
正面から戦う。
→体力を消耗する。
ロボを動かす。
→自分はほとんど動かなくていい。
「……」
数秒の沈黙。
そして、彼女はにやりと笑った。
「これ、いけるんじゃない?」
周囲を見渡す。
誰も彼女を見ていない。
よし!
彼女はロボ・インフェルノの足元へ手を伸ばした。
「ちょっと失礼」
個性を発動した瞬間、ロボの内部から、微かな駆動音が響いた。
「……!」
ガガガガガッ!!
巨大な機体が震える。
「え?」
彼女自身が一瞬固まった。
「……動いた」
ロボ・インフェルノの目が――。
ピカッ。
「……」
彼女とロボが、見つめ合う。
「……よろしくね、ポチ」
「ガァァァァァ!!」
次の瞬間、ロボ・インフェルノが立ち上がった。