第4章 雄英体育祭編
開会式を目前に控えた控室で、一年生たちは、それぞれがスタートの時を待っていた。
「うぅ……緊張する……」
峰田が小刻みに震えながら呟く。
「だ、大丈夫かな……僕、ちゃんと動けるかな……」
緑谷も落ち着かない様子で、何度も手を握ったり開いたりしている。
全国から注目される雄英体育祭。プロヒーローたちも観客席にいる。
普段の訓練とは、明らかに空気が違っていた。
そんな緑谷へ、不意に声がかかる。
「緑谷」
「……轟君?」
振り返る。
その目にははっきりとした意志が宿っていた。
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「……え?」
緑谷が目を見開く。
轟は続けた。
「けど、お前……オールマイトに目を掛けられてるだろ」
その言葉に、周囲の空気が僅かに変わる。
「別に、そこを詮索するつもりはねえ」
一拍置いて。
「……それでも、お前には勝つ」
「……!」
緑谷の目が大きく見開かれる。
その様子を見ていた上鳴が、冷や汗を流した。
「お、おいおい……クラス最強が宣戦布告~?」
冗談めかしているものの、明らかに戸惑っている。
すると、切島が慌てて二人の間に入った。
「おいおい! 急にどうしたんだよ! 直前にケンカはやめようぜ!」
轟は切島を見る。
そして、その腕を軽く肘で押し退けた。
「仲良しごっこじゃねぇんだ。ここにいる全員、本気で一番を狙ってる」
その言葉に、切島は黙った。
空気が変わる。
緑谷は一度、俯いた。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
「轟君が、何を思って僕に勝つって言ってるのかは分かんないけど……」
拳を握る。
「そりゃあ、君の方が上だよ」
轟の目が僅かに動く。
「でも――」
緑谷は周囲を見渡した。
「みんな、本気なんだ」
その視線が、他の科の生徒たちへ向かう。
「他の科の人たちも、本気でトップを狙ってる」
そして、轟を真っ直ぐに見据えた。
「だから、僕も後れを取るわけにはいかない」
声は僅かに震えている。
それでも、目だけは逸らさない。
「僕も、本気で一番を取りに行く!」
一瞬、静寂が落ちた。