第4章 雄英体育祭編
ふと
彼女と爆豪の視線がぶつかった。
「……?」
彼女は、ほんの少し首を傾げた。
先ほどから、じっとこちらを見ている。
何かを警戒しているような、それでいて――妙に楽しそうな。
彼女は公安仕込みの観察眼で、爆豪の表情を静かに読み取っていく。
鋭く細められた瞳、わずかに吊り上がった眉、力の入った拳。
そして、抑えきれていない身体の熱。
(……私と戦いたいんだ)
すぐに分かった。
敵意というより、もっと荒々しく、純粋なもの。
自分の力をぶつけたい。強い相手と戦ってみたい。
そんな、隠しきれない戦闘欲が瞳の奥から滲み出ている。
(なんて挑発的な瞳…)
彼女は、じっと爆豪を見る。
(そんなふうに敵対心を持って見られるとは……)
普通なら警戒するところなのだろう。
(……まぶしいなぁ)
彼女は、なぜだか胸が高鳴り、面白さを感じていた。
こんなにも分かりやすく自分を見てくる人間は、久しぶりだった。
公安では、相手の視線の裏を読み、敵意、警戒、虚勢、隠しごと、それらを一つひとつ分析していく。
けれど爆豪の視線は――あまりにも真っ直ぐな強さがあった。
戦いたい
ただ、それだけ。
その単純さが、妙に可愛らしく思えてしまった。
だから、彼女は、ほんの少しだけ口元を緩めた。
そして――笑った。
きらり、とまるで光がこぼれるような笑顔で。
普段の落ち着いた彼女からは想像できないほど、柔らかく、その美しさには妙な破壊力があった。
真正面から向けられた者の心臓を、一瞬で射抜いてしまうような。