第4章 雄英体育祭編
朝のホームルーム。
相澤が教壇に立つなり、いつもの気だるげな声で告げた。
「……近々、雄英体育祭がある」
「体育祭!?」
「マジか!!」
「学校っぽい事きたぁぁぁ!!」
途端に、教室の空気が弾けた。
爆豪は椅子にふんぞり返ったまま鼻を鳴らし、轟はいつもと変わらない無表情で前を見ている。
緑谷は何やらぶつぶつと分析を始め、飯田は「雄英の体育祭は全国中継される一大行事だ!」と眼鏡を輝かせている。
女子たちも顔を見合わせて、楽しそうに声を上げた。
「どんな競技なんだろう!」
「絶対、めちゃくちゃ盛り上がるよ!」
「私、衣装どうしよう!」
――まさに、普通の高校生。
彼女も、その輪の中にいた。
「体育祭……か」
小さく呟き、ふっと微笑む。
その表情だけを見れば、どこにでもいる雄英生徒だった。
けれど、彼女の脳裏には、今朝届いた一通の伝達事項が浮かんでいた。
『体育祭を、潜入捜査における重要観察機会とする』
公安からの指令だった。
USJ襲撃事件で、彼女はヴィランとの戦闘を余儀なくされた。
これまで極力、表舞台に出ることを避けていた彼女の存在は、結果として敵側に知られることとなった。
――公安関係者が雄英に潜伏している。
そう認識されている可能性がある。
さらに、USJへの襲撃が、外部からの単純な侵入ではなかった可能性。
雄英内部にヴィランと通じる者がいるのではないか。
公安は、そう睨み始めていた。
そして今回、彼女の潜入捜査には、新たな最重要事項が追加された。
――雄英内部の内通者をあぶり出せ。
これまでの任務は、彼女自身の正体を隠しながら、雄英という場所に潜り込み、情報を集めること。
だが、状況は変わった。
彼女自身が敵に知られた可能性がある以上、ただ身を隠しているだけでは意味がない。
ならば、今度は、こちらから敵の視界に入り込む。
体育祭という、雄英の生徒たちが最も注目を集める舞台。
全国から視線が集まり、ヒーロー関係者も、メディアも、そして――ヴィラン側も注目する。
公安にとって、これほど情報を引き出しやすい舞台はない。
そして彼女には、もう一つ。
これまで制限されていたものがあった。